トラウマの発現(20020/2/27まとめ)

トラウマという言葉がだいぶポピュラーになりました。分かりやすくは、「過去に受けた心の傷」といういい方をよくします。

ところでこのトラウマというものですが、ほとんど誰にでもあるものだという事はご存知でしょうか。心の傷と一口に言っても、その傷の深さや傷の程度はそれぞれです。本当の傷に例えると、小さなささくれのようなものから、血を流し続けているような生傷もあれば、古い痕だけが残ったような、それなりに治ったものもあります。カウンセリングにいらっしゃるのは、たいてい傷を受けてから何十年も経っているのに、今も傷が全然癒えずに苦しんでいる方です。

ただ、トラウマというものは誰にでもいくつもあるけれど、人によってはちょっとやっかいな居候くんになります。

トラウマが何故にやっかいなのかというと、いつ、どのトラウマが発現して問題を起こすのか本人にもまったく予測がつかないという事にあります。本人がすっかり忘れている出来事が、トラウマになっていて、それは日頃の決断や嗜好に多かれ少なかれ、何らかの影響を及ぼしているのですが気づきません。そのトラウマが何かのきっかけによって突然、発現して暴れだし、様々な問題(不眠/イライラ/鬱など)になるのです。かさぶたになっていた心の傷が、現在の生活のどこかの経験をきっかけに、また破れて血を吹き出したような感じ、というと分かりやすいでしょうか。

多くは、仕事が急に忙しくなったり、責任が重くなったり、異動になったり、出産で生活が変わったり、といったストレスがひきがねになってトラウマが発現します。多くの人はストレスが原因で不快症状が起こったのだと考えますが、違います。原因はトラウマです。トラウマは無意識下に隠された記憶の中にあるため、本人も本当の原因がトラウマである事は分からないのです。

トラウマが発現して、暴れだすと本人には原因がよくわからないまま、やたらと悲しいとか、まるでやる気が出ないとか、合理的でない劣等感にさいなまれるとか、眠れない、というような不安な気持ちがベースとなる症状になって現れます。社会的生活を送っている人は、原因が分からないという状態には耐えられない不安を覚えるので、頭で考えて、「これは会社でこき使われているからこうなったんだ」「あの人の、あのひどい一言が私を傷つけたからこんなになったんだ」という具合に一番それらしい事を原因だと考えて、我慢しようとします。自己肯定できないほどの強い禁止令を抱えている人は、すべて「自分が悪いんだ」とか「自分さえいなければいいんだ」と考えたりします。

そんな時、自然に周りの状況が好転して、「きつかった仕事のご褒美に休暇を取れた」とか、「あの人と再会して一緒におしゃべりしたら、わだかまりがなくなった」という具合に、ストレスが軽減されれば問題の不安症状が消える事もよくあります。ところが現実は厳しいもので、運悪く弱っている処にさらにストレスがかかる事もあります。そうなると、トラウマによる不安症状はよりひどくなり、無気力、落ち込み、不眠といった鬱症状が進みます。

女性では、妊娠、出産、育児の時期に生活パターンが急変し心身共に負担が増加するためにトラウマが発現する事があります。男性では、職場の配置転換、リストラなどによって鬱を発症する方が大変多いです。

いずれも、目の前の事(ストレス)が問題なのではなく、それはきっかけで、本当は心の中にある過去のトラウマが問題なのです。

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