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前回、怒りの感情について触れました。続けて「偽の感情」というテーマを扱っていきたいと思います。これを知っていれば、結構心理学通と威張れるかも。
さて、感情豊かなほど人間的な魅力があると前回書きましたが、中には感情が溢れすぎて困るという人もいるようです。例えば四六時中怒ってばかりいるとか、ささいな事でも落ち込んで泣いてばかりいるとかです。笑ってばかりいる人なら、周囲を幸せにもするのですけど。
実は、感情には本物の感情と、偽物の感情があります。人間の基本的情動(感情)には「怒り/恐れ/喜び/悲しみ」の4つしかないとされています。だからそれ以外の感情は、全部偽物です。偽物というのは、それを感じている事を嘘だと言っているのではなく、感じている偽物の感情は、本物の感情の裏返しだったり、形を変えたものだったりするという意味です。
焦燥感、憂うつ感、劣等感、屈辱感、不安感、憎しみ、などなど、マイナスの感情を表す言葉はたくさんあります。そしてカウンセリングを受けに来られる方はこれらの感情を訴えられます。治療を始める前に、まずこれらはすべて偽物の感情であるという事を説明します。偽物の感情と言う言い方で分かりにくい場合、代理感情、裏面感情という呼び方もします。これら偽物の感情の根源には、必ず、怒りや恐れや悲しみといった本物の感情が存在しています。
偽物の感情の特徴は、いくらその感情を出して(使って)も、まったくその感情が消えないという事にあります。本物の感情は、使えば使うほど、自然に消化されて消えてしまいます。
そして、何故これら偽物の感情がいつまでも消えずに存在するかというと、根源になっている本物の感情が未処理のまま心の中に放置されているからだと言われています。
子供の頃を思い出して下さい。
お母さんとささいなケンカをして、腹が立ちます。約束していた晩ご飯のおかずを勝手に変更された、とかそんなケンカです。「どうしてハンバーグじゃないの、ひどいよ、約束したのに!」その瞬間、本当に怒っています。口をきくのも腹が立つのでそのまま部屋に閉じこもって抗議します。自分の布団にくるまって、ぷんぷんお母さんの事を怒っています。5分経って、お母さんが晩ご飯の席に付くように呼びに来てもまだ怒っています。でもいつまでも怒ってばかりもいられません。そのうちその怒りは自然に収まって行きます。そして、少し冷めた晩ご飯を食べる頃には、「代りに明日こそハンバーグにしてあげるから」というお母さんの言葉をあっさり受け入れて、機嫌も直っているのです。
これが本物の感情です。
でもどうでしょう、大人になった今、怒りあるいは悲しみ、焦り、落ち込みなどが長いこと収まらないという経験はありませんか。いつまでも悲しかったり、いつまでも落ち込んだり、いつまでも腹が立つというのは、実は偽物の感情なのです。
前回紹介したケースの男性は、「怒り」という本物の感情を隠す為に、無気力や憂うつ感という偽物の感情にすり替えていました。偽物なので全然消えてくれないため、感情を持て余していました。しかし根源にあった、本当の感情、「怒り」を解放して使う事で、偽物の感情も消えてしまいました。この時、いくら偽物の感情を使っても、まったく症状は改善しないのです。
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