私はカウンセリングを受けるべきか?(2003/10/9まとめ・2005/4/11修正)

「私はカウンセリングを受けたほうがよいでしょうか?」

時々、こういう質問を受けます。
この質問がくると、私は気持ちを新たに、その方と向き合うスイッチが入ります。

まず第一に、こういう質問の仕方をする方は、自分の事を自分で決めないで、人の意見で決めようという傾向があります。第二に、この質問をする方は、「自分でもカウンセリングが必要だと思っている」のです。
こういう方に「それはあなたが決めればいいですよ」と答えると、突き放された、と感じてしまう事があります。そしてそういう方は、「必要だと思ったから訊ねたのに、拒絶された」という気持ちを抱いて帰る事になります。

ですから、ゆっくりと段階を踏んだ説明が必要になります。

まず「あなたご自身としては、カウンセリングが必要だと感じてますか?」と訊ね、「実は、必要だという感じがあります。」という言葉を言えるように状況を柔らかくします。こういう方は、その後に「よく分かりません」とか「でも、本当に必要かどうかは自信がありません(だから先生が決めて下さい)。」という意味の言葉を付け加える事が多いです。言葉に出さなくても、自信がないのだ、だから決めて欲しいのだ、というメッセージを、色んなしぐさや目配せで表現しようとしています。

私がカウンセラーとして「ええ、必要ですね」と答えれば、この一件はその瞬間に終わらせる事が出来ます。しかし、私は、お引き受けするからには、その方の自主性、尊厳を最大限尊重したいと考えています。ですから、簡単に終わらせずに、その方が自分の意志を確定出来るまで、時間を割いてこの質問にゆっくりと答えるようにしています。
「カウンセリングを受ける事に関して、何か不安がありますか?」「カウンセリングを受けない代わりに、何か代案や考えがありますか?」「カウンセリングを受けるメリットとデメリットについて説明しましょうか?」などの言葉をはさみながら、その方が考えを整理するのを待ちます。

これはカウンセリングを受けるように説得しているのとは違います。

実は、この「私にカウンセリングは必要だろうか?」という問いが発せられた時、すでにカウンセリングは始まっているのです。クライエントは自分自身に何らかの不都合や問題を抱え、困っている状況を認識しています。それを解決する方法を模索しています。問題が心因性のものである限り、その解決策として、カウンセリングは最も有効なものの一つです。ただし、その答えを、上から投げ落とすだけでは「すがらせる」というスタンスで開始する事になってしまい、クライエントの意志でカウンセリングを開始する事にはなりません。ですから、クライエント自身が持っている答えを見つけるまで、時間を割き、自分の意志で自分に必要な事を選択しているという事実を確立できるよう援助しているのです。この事は、後々、色んな場面でカウンセリングに良い効果をもたらします。

カウンセリングのセオリーの大基本に「クライエントには、自分で答えを見出す能力があるという事を信頼する」という姿勢があります。このクライエントの質問が発せられたその瞬間から、私は彼(彼女)に、その答えを見出し、自分で自分に必要なものを選択し、不必要なものを捨てる能力がある事を信じて話しをするのです。

どんなに混乱の中にあるクライエントでも、能力があります。

自分自身に必要なものが、分かるという能力。それを選択するという能力。そして手に入れるという能力があります。
カウンセラーが答えを与えずに待つという辛抱をする為には、彼らクライエントの能力を信じて疑わないという姿勢と意志が、必要なのです。

こうしてカウンセリングを開始できれば、クライエントは、最初から、「自分には、自分を救う為の方法を選び取る能力が備わっている」という事を証明した状態でカウンセリングを受ける事になります。この為に、時間を割くことは大変な価値のある事なのです。クライエントの尊厳を、最大限に尊重する事。これが、私の思うカウンセリングの基本です。

※例外的に、「自分ではカウンセリングを必要だと思っていない」人もこの質問をします。家族から強引に連れてこられたとか、離婚を突き付けられてしぶしぶカウンセリングにきた、などの場合です。その場合は、体から発しているメッセージが、カウンセラーを拒否しているのですぐに識別出来るのです。その場合の対応は、また少々異なるものになります。基本的に、私の目から見てカウンセリングが必要な人だとしても、本人が本心から必要性を感じていないのであれば、決して説得したり勧めたりはしません。その方が判断するために必要な情報を十分にお渡しして、ご自分で考えて頂きます。これもまた、その人の尊厳を最大限に尊重する事です。それによって、その方が辛い目に会うとしても、それもまた、その方の選択であり、その方の人生です。

カウンセラーには、その人の人生に自分の主観で影響を与えることは許されていないと、私は考えています。


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